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「今度は逃げるんじゃなかったのかよ」台所の入り口に立った百目鬼が言う。
「あそこで逃げたら小羽ちゃんが殴られるだろ」四月一日は朝食のおにぎりを作りつつ、答える。
「さらに他の人がなぐられたら小羽ちゃんが悲しむ。」
「おまえが殴られるのを見ても悲しまないのかよ。」
「うん。それにお前がいたし。」
その頃侑子と小羽とモコナは桜散る庭にいた。
「泊めてくれてありがとう御座います。この着物も。」侑子の着物を着た小羽が言う。目には相変わらず眼帯をしていた。
「モコナ、昨日着た時の小羽より、今の小羽の方が好きだ。」
「うん。自分でも変わった気がする。いっぱい泣いたからかな。」
「それで、あなたの願いは何なの?」侑子が言った。
「ママに、幸せになってほしい。でもまずは私が幸せになろうと思う。この力があればママを幸せに出来ると思ったけど、駄目だったから。」
「そんなことないわ。あなたはよく頑張った。」
その侑子の言葉に感極まり、少しだけ涙をにじませて、言った。
「だから、この力を対価にママのことを悪く言ってるネットとかテレビとかの人たちをやめさせて欲しいの。」
小羽はいままで堪えてきたものがあふれ出んばかりに涙を流した。
「母さん・・・母さん・・・ママ・・・」
侑子は百目鬼に語った。
願い続ければ叶う。そのくらい人の願いは強いけれど、相手の不幸を願えばその分自分も不幸になる。
小羽の母は夫の不幸を願ったので小羽を巻き添えにして不幸になっていった。
小羽はそれに気付いていて、止めようとしたが母は願い続けることによって自分が不幸になっていっていると気付かず、どんどん転がり落ちていった。
けれど小羽は、母が自分で気付くのを待っていた、と。
そして小羽は四月一日と心が近いという。
「何よりも運命を変えるのは願いだから。」
侑子はそう言った。
四月一日はから降り、障子を開けると桜吹雪の中に立つ侑子がいた。
四月一日はすぐ近くに寄り、問う。
「俺、夢の中で生きてるんですか?だからひまわりちゃんと百目鬼以外に会ったことがあるのが死んだ人とか幽霊とかアヤカシとかなんですか?両親の名前が思い出せないのも、ちいさい頃から知ってたはずの管理人さんの顔を思い出せないのも、キツネのおでんと甘露しか食べたことがないのも夢で生きてるからですか?
俺は・・・人間じゃないんですか・・・。」
「いいえ人間よあの子と同じ」
そして侑子は「どうして泣いているの?」と尋ねる。
「俺がいなくなったら悲しむ人が沢山いるから・・・。それに俺も悲しいし。」
そんな四月一日に侑子は変わったのね、と言う。
「夢の中で見たことでもそれが現実になることもあるから。」
そしてさらに言った。「あたしに叶えて欲しいものはある?」
「聞きたいことは沢山あるけどその時が来たら教えてくれるって侑子さん言ってましたし。」
さらに四月一日はこう言う。「侑子さんが叶えて欲しい願いはありませんか?」
すると侑子は驚き、優しく四月一日を抱きしめた。
『あなたの名字には大切な意味があるのよ』
四月一日はある少年と歩いていた。
少年は言った「最近はもう見なくなった?」
四月一日は答える「ううん。でも前よりは見なくなった。」
「じゃああんなのは・・・?」
そして寝てるときに姿は見えないが足音がどすんどすんとさせて寝ている四月一日の上にどーんと倒れ掛かってきたモノや、前髪がはねていて直そうと店の窓を見るとそこには進行方向反対側に四月一日が映っていたりしたモノの話をした。
そしてふとしたときに後ろからもしもしと話しかけてくるモノの話になった。
四月一日は言った。「でもその声に答えちゃいけないんだよね」
「うん。気付いたと分かると余計に何かしてくるからね。」
「でも・・・それって悲しい・・・」
そして四月一日は少年の方を向くと少年が誰なのか気付いた。
「きみ・・・あの骨の・・・。成仏したのにどうして?」
それはいつか四月一日の誕生日の日に成仏した少年だった。四月一日と同じくらいの年になっている。
「ここは夢の世界だからね。じゃあきみも答えてあげなきゃ。声に。」
すると近くのタバコ屋にある公衆電話が鳴った。
四月一日が受話器をとるとあの「き え る な」と言う声がした。
その声がしたかと思うと四月一日は現実世界に戻っていた。
その瞳からは涙が流れていた。